施術の前には問診を行います。
どんな症状でいらっしゃったのか。
どれくらい続いているのか。
思い当たる原因はあるか。
それ以外の病気や、飲んでいるお薬。
その他諸々のことを、特に初回には詳しくうかがいます。
リラクゼーション目的の方の場合、正直めんどくさそうにされる方もいらっしゃいますが、多くの方は、丁寧に答えてくださいます。
実はこの問診から、治療は始まっています。
体の痛みは、体が原因とは限らないからです。
お体に一切触れずに、私とお話するだけで症状が改善してしまう例もあるほどです。
それは、私に不思議な力があるわけではなく、そもそも痛みというのはそういうものだからです。
痛みを感じているのは、脳です。
手が痛い、と思っていても、それは脳がそういう判断をしているから。
手や足を事故などで失った方が、失った部位の痛みを感じる「幻肢痛」「ファントム・ペイン」は、まさにその例です。
長年、ある部分の痛みを感じ続けた方は、脳がその痛みを記憶してしまい、痛めていた箇所が治っているにも関わらず、痛みだけが残ることがあります。
そして、「痛みが出るんじゃないか」という不安と、その痛みが結びつくと、なかなかその症状は改善されません。
「どこに行っても治らない痛み」の一部は、そういうものだったりします。
そのような例では、患者さんご本人が、ご自分の痛みについてきちんと理解することが必要です。
そのためには、患者さんとセラピストが、その痛みについてきちんとお話をすることが大切なのです。
混雑する病院や、他の患者さんが大勢いる整骨院、10分単位で料金が加算される整体院などでは、そのようなコミュニケーションは取りにくいでしょう。
タイトルに書いた「問診65分」は、初回に当院で最も長くお話をうかがったケースです。
初回、症状について深く聞き取りをしていった結果、ご家庭のこと、お仕事のこと、これまでの治療のことなど、いろいろなことが、ときには涙ぐみながら、患者さんの口からこぼれてきました。
それらが絡み合って、症状が悪化していったことが、会話をすることでわかったのです。
若い頃から、全力で頑張ってきた方、無理に無理を重ねてきた方でした。
対話が終わった後、患者さんはこうおっしゃいました。
「こんなにきちんと、痛みとか体のことを聞いてくれた先生は、今までいませんでした。すごくスッキリした気分です(^^)」
「家族に言っても、またか、みたいな顔されるし、お医者さんはパソコンばっかり見てるし、整骨院はうるさいし、ちゃんと私の話を聞いてくれる人って、いないと思ってたんです」
70代以上の女性の場合、若い頃のご苦労が現在の症状に影響しているケースが少なくないように思います。
嫁として、妻として、母として、あるいは働き手として、長い間積み重ねてきたご苦労が、いま痛みとなって現れている、そう感じることは多いです。
患者さんご本人が、痛みや症状と向き合って、理解すれば、改善も早いです。
ただ痛みを恐れているだけの状態は、治癒を遅くします。
当院の施術は、1回50分を目安にしていますし、料金もそのようになっています。
しかし、時間を優先して、改善が後回しでは本末転倒です。
ですから、スケジュールに余裕がある場合、できるだけその方に最適な、必要なだけの時間をかけるよう、心がけています。
この患者さんのケースでは、問診65分のあと、施術を50分行いました。
2回めのご来院時には、つらさが半分以下になった、不安もなくなったと笑顔で教えて下さいました。
私はいわゆるゴッドハンドと呼ばれるような、奇跡の手を持つマッサージ師ではありません。その場で何でも治しますなどとは、口が裂けても言えませんし、言いません。
しかし、患者さんが良くなるために必要な時間を、可能な限り確保し、コミュニケーションや技術を、一生懸命考えることは、いつも心がけています。
「すべての人に最適な治療院」は理想ですが、なかなか難しいでしょう。
私の治療院は、ここに書いたようなことを大切に、日々患者さんと向き合う治療院です。
わたしに合うかも、お母さんに、お父さんにピッタリかも、と思われたら、ぜひお電話ください。
お待ちしております(^^)。
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