「閃く経絡(ひらめくけいらく)」
英国人鍼灸師で医師でもあるダニエル・キーオン氏が著した、医学界に衝撃を与える本です。
東洋医学、特に鍼灸や指圧では、いわゆるツボ(経穴)を用いて治療を行います(指圧は経穴を使わない人もいます)。
しかし、ツボとは何か、なぜそこを刺激すると体が良くなるのかは、解明されていませんでした。
理屈がはっきりしないので、西洋医学の医師の中には、鍼灸や東洋医学全般を邪道として扱う人も少なくありません。
もちろん、一般の方の中にも、東洋医学をまじないの類と見ている人が少なくないようです。
今ではWHO(世界保健機関)も361の経穴を認めているというのに。
(余談ですが、読売ジャイアンツの沢村投手が、球団のトレーナーから鍼治療を受けて投球できなくなったというニュースが流れたとき、Yahooニュースのコメント欄には、「鍼なんか打ってるからそういうことになる」とか、「球団がそんなオカルトみたいなことさせてるのが悪い」とか、そういうコメントが多数投稿されていました。ああ、そういう風に見られてるんだなあと少し落ち込みましたw。ちなみに、鍼灸業界では、鍼で件の神経を傷つけたのだとしたら、その鍼師は逆にすごい、普通は神経に鍼を刺すなんて無理!という声が多数派だったようです。)
さて、この本はその謎に、「発生学」という新しい切り口から攻め込んでいます。
生物学系の大学で学んだ私も、発生学と経絡経穴が結びつくなんて、思いもしませんでしたよ。
ツボが多数集まっている箇所は、発生学的にも重要な箇所であるということ。
そして、経絡・経穴をファッシアという膜組織にあるものだ、と考察しています。
ファッシアを流れる微弱な電流が、経絡の正体ではないかと。
ファッシアというのは、日本語では「膜・筋膜」と表されるもので、体の中の組織を包み込み、連絡する膜組織です。
これまで、ファッシアは機能的には重要視されておらず、人体解剖などでもまっさきにどけられてしまうような存在でした。
しかし、彼の論に妥当性があれば、これからファッシアに関する研究は盛んに行われるでしょうし、経絡経穴の西洋医学的な解明も進むかもしれません。
ちょっとワクワクします。
さてこの本、今重版中で、一時的に品切れになっています。
それほど、注目されている本です。
それにしても、なんでこれを書いたのが英国人なんでしょう?
中国か日本の研究者がこれを先駆けるべきだったんじゃないかなあ。
少し残念です。
日本における東洋医学の立ち位置が、そういうところにも表れているような気がして。
まあよいでしょう。
大切なのは、こういう研究が進んで、西洋医学も東洋医学も手を取り合って、患者さんを救っていくことです。
そういう意味でも、この本、意義が大きいと思います。
興味を持った方、ぜひ読んでみて下さい。
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